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東京地方裁判所 平成元年(ワ)70293号 判決

原告

朝銀神奈川信用組合

右代表者代表理事

尹旗東

右訴訟代理人弁護士

小室貴司

被告

株式会社ジェーシーイ

右代表者代表取締役

石田幸男

右訴訟代理人弁護士

矢野義宏

鈴木泰文

主文

一  原告と被告間の東京地方裁判所平成元年手ワ第二九七号約束手形金請求事件について同裁判所が平成元年八月二五日に言い渡した手形判決を認可する。

二  異議申立後の訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、金五億円及びこれに対する平成元年二月二四日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、別紙手形目録記載一の約束手形一通(以下「本件手形」という。)を所持している。

2  被告は、本件手形を振り出した。

3  本件手形は支払呈示期間内に支払場所に呈示された。

よって、原告は被告に対し、本件手形金五億円及びこれに対する満期から支払済みまで手形法所定年六分の割合による利息を支払え。

二  被告の本案前の主張

1  被告は、平成元年二月一〇日、被告を債権者、原告を債務者、株式会社太陽神戸三井銀行(当時株式会社三井銀行)を第三債務者として、横浜地方裁判所に本件手形につき執行官保管、取立て・処分及び支払禁止の仮処分を申立て(同庁平成元年ヨ第一二三号手形仮処分事件)、同年二月一四日、同旨の仮処分決定を得た。同決定に対しては、原告から異議申立がなされるとともに、同裁判所に対して起訴命令の申立がなされ、同裁判所は、右仮処分についての本案の起訴を命じたので、被告は右命令に応じ、平成元年三月二三日、同裁判所に原告、富国開発株式会社(以下「富国開発」という。)及び有限会社カネコ(以下「カネコ」という。)を相手として、被告の右原告らに対する本件手形に基づく債務の存在しない旨の確認等を求める訴訟を提起した(同庁平成元年ワ第六八五号手形返還等請求事件)。

2  原告は、平成元年四月三日、被告を相手方として、本件手形に基づく金員の支払を求める手形訴訟を提起し(東京地方裁判所手ワ第二九七号約束手形金請求事件)、同年八月二五日、原告勝訴の手形判決がなされたので、被告は、同月二九日、右手形判決に対して異議の申立をし、現在本訴事件として係属中である。

3  起訴命令に基づいて本案訴訟が係属したような場合には、原告は、本案事件に対して反訴を提起すれば足り、ことさらに手形訴訟を認める実質的理由を欠くものである。手形訴訟の段階から本件訴訟は二重訴訟になっていたのであるから却下を免れない。

手形訴訟による手形判決がなされ、それに対して異議申立がなされた場合には、その時点で二重訴訟になるというべきであり、原告としては、本案訴訟に反訴を提起すれば足りるというべきであるし、併合審理が期待されるところであるから、却下は免れない。

三  被告の本案前の主張に対する原告の答弁

1  被告の本案前の主張1の事実は認める。

2  横浜地方裁判所の事件は手形に基づく債務が存在しないという債務不存在確認の訴訟であるのに対して本件訴訟は手形金の支払を求める積極的な給付訴訟である。すなわち、原告が、右債務不存在確認訴訟で勝訴しても本件手形金の給付判決まで得られるわけではないし、また、右訴訟と手形訴訟は異なった訴訟手続であるから、右債務不存在確認訴訟手続において、手形訴訟手続により手形金を訴求することはできないところであるので、手形訴訟として別訴を提起することは許され、また、手形判決に対し異議申立がなされた場合には、当然に手形金の支払請求権の存否について審判できると解すべきである。

四  請求原因に対する認否

1  請求原因1、2の事実は認める。

2  同3の事実は知らない。

五  抗弁

1(悪意の抗弁)

(1)  被告代表者石田幸男(以下「石田」という。)は、昭和六〇年八月末ころ、株式会社サン商会(以下「サン商会」という。)代表者中江昇(以下「中江」という。)に依頼され、株式会社三和証金外一社振出、金三億円、満期昭和六〇年八月一九日の約束手形二通(以下「三和証金手形」という。)について須江満美(以下「須江」という。)が富国開発に対して負担する償還義務を不動産(茨城県東茨城郡常澄村栗崎字関の上一四二七番地ほか五箇所所在、家屋番号一四二七番、鉄筋コンクリート造ルーフィング葺三階建、浴場・旅館、床面積一階1120.12平方メートル、二階1080.92平方メートル、三階311.04平方メートルの建物のほか建物三棟、土地二〇筆、以下「ラドン温泉会館等」と総称する。)を処分して清算するまでの間、富国開発に見せ、預けるだけで取立てには回さないとの約定で、別紙手形目録記載二の約束手形(以下「旧手形」という。)をサン商会に対し振り出した。

(2)  そうでないとしても、被告は旧手形を融通のため振り出し、見返りに中江からサン商会振出、金額五億円、満期昭和六一年二月二〇日の約束手形一通(以下「サン商会手形」という。)の交付を受け、その際、両者間においてもサン商会が右手形の支払をしなければ、被告も旧手形の支払をしない旨の合意がなされたが、サン商会手形は当初から決済資金の裏付けのないものであった。

(3)  中江、国井洪(以下「国井」という。)、須江(旧手形の裏書人)及び富国開発代表取締役金子雅昭(以下「金子」という。)らは、右(1)又は(2)の事情を知っていた。富国開発とカネコは実質的に同一の会社である。原告も右事情を知っていたか、そうでないとしても、カネコから原告に対する裏書は、取立委任の目的でなされた、いわゆる隠れた取立委任裏書である。

(4)  旧手形は、金額五億円の手形に書き替えられ、これが順次一四回書き替えられ、本件手形が最後に交付された。

2(前者に対する原因関係の消滅・後者の抗弁)

(1)  国井、新日本勧業株式会社ら(以下「国井ら」という。)は、富国開発ないしカネコに対する昭和六〇年六月二六日の金六億円の借入金債務又は三和証金手形の償還義務等の支払担保のため富国開発に対し旧手形を交付し、これが前記1(4)のとおり書き替えられて本件手形に至ったものであるが、同年一一月一一日合意の上これらの原因債務の弁済に代えてラドン温泉会館等の所有権を富国開発に譲渡した。

(2)  そうでないとしても、新日本勧業株式会社は昭和六〇年一一月初め事実上倒産し、昭和六二年一〇月一二日国井らの富国開発ないしカネコに対する右借入金等の債務を含めて事実上の清算が行われた。

(3)  前記のとおり、富国開発とカネコは実質的に同一の会社であり、カネコから原告に対する裏書はいわゆる隠れた取立委任裏書である。

3(権利濫用ないし無権利の抗弁、訴訟信託の抗弁)

(1)  富国開発ないしカネコは、原告に対し保管を目的として本件手形を預託したにすぎないから、原告は手形上の権利を取得していない。

(2)  カネコから原告に対する裏書は、被告に対し訴訟行為することを目的としてなされたものであるから、信託法一一条に違反し無効であって、原告は手形上の権利を有しない。

(3)  原告は本件手形が満期に決済されなかったので、富国開発又はカネコから、本件手形金額相当の金員を回収したか、もしくは手形金の支払に代えて別個の手形を取得しているから本件手形上の権利は消滅した。

六  抗弁に対する認否

1  抗弁1の(1)、(2)の事実は知らない。同(3)、(4)の事実は否認する。

2  同2の(1)、(2)の事実は知らない。同(3)の事実は否認する。

3  同3の(1)ないし(3)の事実は否認する。

第三  証拠関係〈省略〉

理由

一本案前の主張について

1  被告の本案前の主張1の事実は、当事者間に争いがない。ところで、横浜地方裁判所平成元年ヨ第一二三号手形仮処分事件については、平成三年三月一四日、同裁判所において原決定を取り消す旨の判決がなされたこと、被告はこれを不服として東京高等裁判所に対して控訴したことは、当裁判所にとって顕著な事実である。

本件訴訟以前に被告は原告に対し本件手形につきその支払義務がないことの確認を求める訴えを横浜地方裁判所に提起し、右訴えは現に同裁判所に係属している。そこで、被告は、本件訴訟の提起が民事訴訟法二三一条にいう二重起訴にあたると主張するので、この点について検討する。

2 本件のように、手形金債務の存在しないことの確認を求める債務不存在確認の訴えが提起されている場合に、さらに同一の手形に基づく手形金の支払を求める給付訴訟を提起することは、同一の当事者間において同一の手形についての支払義務の存否につき、前者が消極的にその確認を求め、後者が支払義務のあることを前提として積極的にその支払方を求めるものであって、請求の当否に関する権利関係は同一であるから、被告が主張するように相反する判断の防止とか審理の重複は避けるべきであるとする要請が働くことは否定できない。しかしながら、手形訴訟は、通常の訴訟とは異なった厳格な証拠方法と審理方針が定められ、迅速な債務名義の実現により手形の経済的効用を維持することに資するを目的として定められた訴訟制度であり、そのために通常訴訟とは異なった別異の訴訟手続が定められたのである。これにより、手形債権者は、手形金債権を実現するために、手形訴訟手続による迅速な権利実現を保証されたのである。したがって、手形債務不存在確認請求訴訟が提起された場合であっても、手形債権者は、依然として手形訴訟による権利の迅速な実現を図ることが制度上否定されていないことは明らかである。そうでないとすれば、手形債務者の訴訟提起の前後により手形債権の迅速な実現が左右され、手形債権者の法的利益が害されることとなるだけでなく、場合によっては手形債務者が手形債務不存在の訴えを恣意に先行させることによって手形訴訟による権利の実現が妨げられることになる。加えて、手形訴訟を手形債務不存在確認請求に対する反訴としてなすべきであるとすると、手形訴訟においては証拠方法に厳格な制限があって本訴反訴の訴訟資料の共通を図ることは実質上困難であるから、手形訴訟についての審理の迅速性が阻害され、手形訴訟制度の趣旨を損なうことになる。そうであるとすれば、手形債務不存在確認請求訴訟の係属中に別途手形訴訟を提起することが民事訴訟法二三一条の二重起訴の禁止に該当するとして、手形訴訟による迅速な権利実現のための途を閉ざすことは、手形訴訟制度を没却するものといわざるを得ず、法が手形債権者の利益擁護と手形の経済的効用維持のために認めた手形訴訟制度の趣旨・目的に反する結果となる。

したがって、本件訴訟の提起が、民事訴訟法二三一条にいう二重起訴の禁止に該当すると解すべきであるとする被告の右主張は採用しない。

3 次に、被告は、手形判決に対して異議が申し立てられた場合には、その時点で二重起訴になると主張する。異議申立後の通常訴訟手続での訴訟物が、原告の手形債権の存否であり、また、証拠制限もないことから、確かに被告主張のように二重訴訟の状態にあるといえる。

手形訴訟は、証拠制限のある簡易な手続であるとはいえ、手形訴訟による訴えの提起があった当初から訴訟係属の効力が生じるのであり、双方審尋方式の判決手続による本案判決が予定されているのである。手形訴訟の本案判決に対する異議申立により、当該手形訴訟は、口頭弁論終結以前の状態に復し、その後は通常訴訟手続による裁判が行われることになる(民事訴訟法四五六条)。しかしながら、異議申立後における通常訴訟手続は、手形訴訟手続に接続した後続手続として審理が行われるものであり、異議申立前の手形訴訟手続は、いわば第一審の訴訟手続における先行手続として位置付けられる手続といえる。このように異議申立後の通常訴訟手続は、手形訴訟手続と切り離された別異の訴訟手続ではなく、一体として第一審に係属する訴訟手続を形成するものである。異議申立後の通常訴訟手続に関する定めは、要するに、手形訴訟の本案判決に対する異議申立後において拠るべき訴訟手続を定めたにとどまるものであって、これが新たな訴訟の提起に当たらないことは明らかである。

ところで、手形債務不存在確認請求訴訟と手形判決に対する異議申立後の通常訴訟手続による訴訟とは、その審理の対象や既判力の範囲も同一であるから、審判の矛盾等を避けるためその調整の要請が強いことは多言を要しないところである。しかしながら、このような要請については、いずれの訴えも未だ裁判所による本案判決がなされていないのであるから、訴訟進行に関する諸方策により解決されるべきであり、またこのような運用により解決が可能とされるところである。

二請求原因について

1  請求原因1、2の事実は当事者間に争いがない。

2  〈証拠〉によれば、請求原因3の事実が認められ、これに反する証拠はない。

三抗弁について

1  抗弁1について

(1)  まず本件手形振出の経緯等についてみるに、〈証拠〉並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

ア 須江は、カネコから三和証金手形の割引を受け、他方、国井は、須江のため右手形の支払を担保する目的で、富国開発に対し(カネコの代表取締役金子英子と金子雅昭とは夫婦である。)新日本勧業株式会社振出、金額三億円、満期昭和六〇年九月一九日の約束手形二通(以下「新日本勧業手形」という。)を交付していたところ、三和証金手形が不渡りとなった。しかし、須江は右手形につきカネコに対し買戻等の責任を果たす資力がなく、国井もまた、支払担保のため交付した新日本勧業手形が取り立てられると決済し得る見込みがなかったので、困って中江に相談をした。両名は金策に苦慮したが、とりあえず金子のもとへ赴いて助けを求め、同人も含めて対策を話し合った結果、信用のある手形を入手し原告に割引を受けて急場を凌ぐこととし、中江において、同人とかつて不動産取引をしたことがあり、金子とも面識のある石田に被告名義の手形の振出を依頼することとした。

イ 中江及び国井は、昭和六〇年八月末ころ、石田に対し、国井が前記のとおり窮地に陥っていることを訴えて被告名義の手形の振出を依頼するとともに、被告が手形を振り出した場合はこれを富国開発に支払担保のため譲渡し、同社はさらにこれを原告に割引のため交付するが、満期までには国井がラドン温泉会館等を担保に融資を受け、又はこれを売却するなどして資金を得て右手形を買い戻すか、もしくは金子が右手形を別の手形と差し替えるなどして取立てに回されないようにするほか、サン商会振出の手形を見返りに渡しておくから心配はない旨述べ、サン商会手形を石田に交付した。他方石田は、中江らの言を信じて右依頼に応じ、中江に対し旧手形を振り出し交付した。中江は、石田から旧手形の交付を受けたのち、これらに自ら裏書をし、国井及び須江にも裏書をさせた上金子に譲渡した。

ウ 三和証金手形は、カネコと原告間の信用組合取引約定に基づき、原告に対し割引譲渡されていたが、右手形が不渡りとなったため、富国開発が国井から担保のため取得していた新日本勧業手形がカネコを経由して原告に対し割引により譲渡され、その割引金により右不渡手形が買い戻された。そして、新日本勧業手形もまた決済資金がなかったので、金子が前記経由で取得した旧手形及び国井が別途交付した金額五〇〇〇万円の約束手形一通(金額合計六億円)が原告に対し割引譲渡され、右割引金により新日本勧業手形が買い戻された。しかし、国井らは旧手形の決済資金の用意もできなかったので、中江は再び石田に依頼して被告名義の金五億円の約束手形の振出を受け、これと株式会社コスモワイド振出、金額五〇〇〇万円の約束手形二通(金額合計六億円)を金子に交付し、同人はこれをカネコを経由して原告に割引譲渡し、割引金を旧手形の買戻金に充てた。

右五億円の手形も決済されず、以後一四回にわたり、同様の手順で被告振出、金額五億円の約束手形の割引、前手形の買戻しが行われ、本件手形が最後に振り出された。

エ 旧手形ないし本件手形につき原告はカネコから8.5ないし9.5パーセントの割引料を取得した。

(2)  そこで抗弁1について検討するに、右認定のとおり、中江らは石田に対し旧手形が富国開発ひいては原告に譲渡されることがあっても、満期までには買戻し又は手形の差替え等により右手形が取立てに到らないようにする旨約した事実は認められるが、同(1)の約定、すなわち、単に旧手形を富国開発、原告に見せ、預託するだけで、取立てには回さない(手形上の権利は譲渡しない、あるいはこれを行使しない趣旨と解される。)旨約した事実を認めるに足りる証拠はない。〈証拠〉には、一時手形を貸し、あるいは預ける趣旨で旧手形を振り出した旨の記載があるが、これらは他の前掲各証拠と矛盾するので信用しえず、これらの記載から右約定を認定することはできない。また、右認定のとおり、同(2)の事実中、中江が石田に対し旧手形の見返りにサン商会手形を交付した事実は認められるが、前示認定のとおり中江は単に石田を安心させる意図からサン商会手形を同人に交付したに過ぎないのであって、それ以上に、当事者間において同手形の支払がなければ旧手形の支払もしない旨の合意がなされた事実を認めるに足りる証拠はない。

(3)  また、仮に抗弁1の(1)、(2)及び(4)の事実が存在したとしても、前記のとおり原告が割引料を取得している事実に照らし、原告の代表者あるいは担当者が右(1)又は(2)の事実を知りながら旧手形を取得したこと又はカネコから原告への裏書がいわゆる隠れた取立委任裏書であることを認めるに足りる証拠はない。前示認定のとおり新手形の割引と旧手形の買戻しが繰り返され、実質上手形の書替えと同様の効果がもたらされていたとしても、当初の右原因関係と異なる事由によって買戻しあるいは書替えがなされたということもないのであるから、新手形の取得が手形の割引であることが否定されたと認めることはできないし、また、仮にこれが手形の割引ではなかったとしても、当然に隠れた取立委任裏書であると認めることはできないし、本件全証拠によるもかかる事実を認めることはできない。

2  同2について

(1)  ラドン温泉会館等の登記簿謄本である〈証拠〉には、同会館等の所有権が昭和六〇年一一月一一日代物弁済を原因として新日本勧業株式会社から富国開発に移転した旨の記載があるが、右記載は昭和六二年一〇月一二日錯誤により抹消されている上、代物弁済の対象となった債務が被告主張の債務であるか否かも明らかでない。また〈証拠〉にも被告主張の代物弁済がなされた旨の記載があるが、これも具体性に乏しい内容で債務の特定も十分ではないので、これにより右代物弁済の事実を認めることはできず、その他右事実を認めるに足りる証拠はない。

(2)  同2の(2)の事実についてもこれを認めるに足りる証拠はなく、同(3)の事実については、前記1の(3)のとおりである。

3  同3について

本件手形の振出の経緯等は前示認定のとおりであって、保管のため本件手形を預託した事実(同(1))及び訴訟信託の事実(同(2))を認めるに足りる証拠はない。また、同(3)の事実もこれを認めるに足りる証拠がない。

四以上の事実によれば、原告の請求は理由があるからこれを認容すべきところ、主文掲記の手形判決はこれに符合するから同判決を認可することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官星野雅紀 裁判官坂野征四郎 裁判官山之内紀行)

別紙〈省略〉

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